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通信衛星まとめ その1Communication Satellite part1

通信衛星とは

通信衛星とは地上・船舶・航空機、さらに人工衛星との間で通信を中継する人工衛星です。現代ではインターネット接続、スマートフォン通信、船舶・航空機向け通信、災害時のバックアップ通信、安全保障分野などで広く利用されている重要な社会インフラとなっています。

日本で整備が進められている通信衛星は、大きく2つに分類できます。1つは地上・船舶・航空機などの間の通信を中継する通信衛星、もう1つは観測衛星が取得したデータを地上へ迅速に下ろすための通信衛星です。このページではまず前者について解説します。

静止通信衛星と低軌道衛星コンステレーション

従来、地上・船舶・航空機などの間の通信を中継する通信衛星は、静止軌道上に配備された衛星によって広範囲に通信サービスを提供する形態が一般的でした。この形態のサービスには大型の衛星を静止軌道に打上げる必要があるため、1機あたりのコストは数百億円規模に及びますが、単機で広い地域へ通信サービスを提供できることが強みです。

今後打上げられる予定のスカパーJSATの静止通信衛星「JSAT-31」を例に挙げると、この機体は1機で50Gbps級の通信容量を持ち、放送(ブロードキャスト)、船舶・航空向け通信、BCP用途などで活用されると思われます。一方で通信容量が限定的であること、また静止衛星は高度約36,000kmと遠いため通信遅延が大きいことが難点です。

一方、近年では低軌道(高度2,000km以下)に小型の通信衛星を多数打上げて一体運用する「低軌道通信衛星コンステレーション」が急速に存在感を強めています。これらは静止軌道上(高度約36,000km)より地上から近い位置に配備されているため、遅延が小さくインターネット通信や双方向通信に適しています。しかし継続的なサービスを提供する為には、多数の衛星と複雑なネットワーク運用が必要なため大規模な投資が必要になります。

Starlink(スターリンク)

2026年4月現在、通信衛星業界において圧倒的な存在感を放っているのが、米スペースX(SpaceX)が開発・量産・運用しているスターリンク(Starlink)と呼ばれる低軌道通信衛星コンステレーションです。既に数百万のユーザーを獲得している同サービスは、通信業界を語る上で外せない存在です。

スターリンクは数千機の低軌道通信衛星を打上げ済みで、世界各地でサービスを開始しています。海上や離島、災害時など地上インフラが弱い地域でも高速・低遅延の通信を提供しています。現在の主力機「Starlink V2 Mini」は1機あたり96Gbps級の通信容量を持つとされ、それらを多数配備することで多くのユーザーを抱えながらも高い通信品質の維持を図っています。

さらに既存のスマートフォンと直接つながるDirect to Cellの開発・打上げも進んでいます。通信速度は専用アンテナ利用時よりも低下しますが、専用の通信アンテナが必要であった衛星通信が大きく変化する取り組みです。

多大な費用がかかる低軌道衛星コンステレーションを、スペースXが構築できた大きな理由は再使用ロケットを自社で運用していたことです。スペースXが開発したファルコン9ロケットは、人工衛星打上げ用の再使用型ロケットです。そのため、2025年だけで120回以上のスターリンク専用ファルコン9打上げが実施され、他社よりはるかに速いペースで軌道上配備を進めることができています。

スペースXは衛星の開発・量産・打上げ・運用、全てを内製化・垂直統合しており、それがスターリンクの圧倒的な競争力に繋がっています。通信衛星は地上通信を「補完する」という立場から、地上通信の一部を「代替する」へ移り変わりつつあります。

J-LEO(自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業)

スターリンクなどの低軌道通信衛星コンステレーションは非常に有用です。しかし通信インフラは安全保障にも深く関わるため、日本としても海外に依存しない通信衛星インフラの整備が求められてきました。こうした背景から、総務省は令和7年度補正予算で「自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業」予算として1,500億円を計上しました。

この事業はCIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)が基金設置法人として取りまとめており、既に公募が開始されています。この事業は、日本国内で運用・管理される低軌道衛星コンステレーションを活用したDirect to Cell(衛星ダイレクト通信サービス)を提供する事業者に対し、衛星や地上設備の整備費用を最大1/2補助するとされています。

早ければ夏にも採択事業者が決定される見込みで、今後の展開が注視されます。

次のページでは、地球観測衛星が取得したデータをより活用するための通信衛星について解説していきます。

UPDATE:2026年4月8日

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