地球観測衛星 その2(光学衛星)Optical satellite
光学衛星とは
光学衛星とは、簡単に説明すると宇宙空間に打上げたデジタルカメラです。地球表面で反射した太陽光を捉えて撮影するので、自ら電波を放射する必要が無いため消費電力が少なく、また判読性が高い画像を取得できるなど様々な利点があります。一方、雲を透過できない、夜間は撮影対象を判別しにくい等の難点もあります。
近年では、民間企業による光学衛星の開発・運用の取り組みが増加しています。日本国内でも、アクセルスペース・マーブルビジョンズ・キヤノン電子・アークエッジスペース・NEC・スカパーJSATといった多くの民間企業が参入しており、多くの衛星画像・解析ソリューションサービスの提供が開始されています。
AXELSPACE(アクセルスペース)
アクセルスペースは日本の民間宇宙ベンチャー企業で、持ち株会社のアクセルスペースホールディングスは2025年に東証グロース市場に上場しています。同社は2018年から光学衛星GRUS(グルース)による衛星コンステレーション構築を開始し、2019年より地球観測プラットフォームAxelGlobe(アクセルグローブ)によるサービスを提供しています。
2026年03月現在、アクセルスペースは中分解能光学衛星GRUS-1(分解能2.5m)5機を、高度500~600km付近の低軌道上に展開しています。さらに今後、新型中分解能光学衛星GRUS-3(分解能2.2m)7機を、2027年05月までに打上げる予定です。なお、技術実証機GRUS-3αが2025年6月に先んじて打上げられており、軌道上実証を通じてGRUS-3の信頼性向上を図るものと考えられます。
高分解能光学衛星の開発も進められており、2028年5月までに3機の打上げが計画されています。さらに2機の追加製造も決定していますが、打上げ時期は未定です。これらの衛星は、分解能50cmを目指して開発が進められています。
アクセルスペースは2026年2月、防衛省の衛星コンステレーション整備・運営事業において、トライサット・三井物産エアロスペースと5年・総額約436億円(税抜)の画像納入契約を締結しています。これは同社の財務状況から考えると極めて大きい案件獲得で、今後の成長を支える事業となることが期待されています。
Marble Visions(マーブルビジョンズ)
マーブルビジョンズはNTTデータの完全子会社として、2024年7月に設立された地球観測衛星の開発・運用、衛星データサービスの提供を目的とした民間企業です。現在はパスコ・キヤノン電子の出資も受けています。同社は2024年11月、宇宙戦略基金の「高分解能・高頻度な光学衛星観測システム」事業に採択され、最長5年間・最大280億円という巨額の支援を受ける事が決定しました。
この事業は民間企業による国際競争力のある光学衛星コンステレーションの構築を加速させ、国内のみならずグローバルでの展開が可能な企業の育成を目指しています。同社は観測幅50km以上・分解能40cm級の光学衛星開発を目指しており、2027年までに初号機、2028年までに計8機を打上げる予定です。
これらの衛星の製造・開発は前述したキヤノン電子が主導します。キヤノン電子はキヤノングループのカメラ製品等の開発・生産を担う企業で、近年は光学衛星開発・運用などの宇宙事業も展開しています。これまでに、超小型光学衛星CE-SAT-I・CE-SAT-IIB・CE-SAT-IEの3機の光学衛星を打上げており、その撮影データの販売も開始されています。
2024年に打上げられた最新のCE-SAT-IE(シーイー・サット・ワンイー)は、重量わずか70kgの機体に口径400mm望遠鏡とキヤノン製ミラーレスカメラEOS R5を搭載しており、分解能0.8mという高解像度で地表面を撮影する事が出来ます。
なお、この宇宙戦略基金の「高分解能・高頻度な光学衛星観測システム」事業においては、アクセルスペースも衛星システムの補完および拡張を担うという位置づけで参画しています。
スカパーJSAT
スカパーJSAT(ジェイサット)は、日本国内で最大級の宇宙事業者です。同社は、これまで主に静止通信衛星を使用した通信サービスを提供してきましたが、2025年02月に米Planet Labs(プラネットラボ)の地球観測衛星Pelican(ペリカン)を10機購入することを決定し、地球観測事業を本格的に開始することを発表しました。
導入されるPelicanは第2世代機で、質量215kgの軽量ながら最大解像度30cmを誇る光学衛星となる予定です。現在の計画では2026年~2027年初頭に2機、2027年中頃から8機が打上げられる予定です。これによりスカパーJSATは、自社アセットによる地球観測衛星事業を拡大していくものと思われます。
次のページではもう一種の地球観測衛星、SAR衛星を解説していきます
主な参考ページ
- Axelspace
- Axelspace Holdings
- AxelspaceHD-第6期有価証券報告書
- AxelspaceHD-FY2026/05-Q2決算説明会資料
- アクセルグローブプロダクトガイド
- マーブルビジョンズ
- 官民連携による光学観測事業構想について[2025/01/22]
- 官民連携による光学観測事業の進捗状況[2025/01/22]
- 文科省:宇宙戦略基金実施方針概要[2024/04/09]
- 文科省:官民連携による光学観測事業構想について[2024/03/25]
- 次期光学ミッションの方向性について[2023/08/25]
- 日本の光学地球観測衛星が14年ぶり復活へ[2025/03/21]
- キヤノン電子
- H3ロケット試験機2号機フェアリング及びペイロード[2024/01/23]
- アークエッジスペース
- スカパーJSAT(宇宙事業IR-DAY)[2026/03/11]
