MENU

SBIRフェーズ3中小企業イノベーション創出推進基金フェーズ3

SBIRフェーズ3とは?

SBIRフェーズ3について、管理人の覚書。SBIRは中小企業イノベーション創出推進基金の事で、「Small Business Innovation Research」の略称。フェーズ3とは、3回目の支援といった意味ではなく、技術実証フェーズの意味で、フェーズ1はPOC・F/S支援・フェーズ2は実用化開発支援という位置づけ。

スタートアップ企業等を対象に長期間(基本的に5年)の大規模技術実証事業で、技術成熟度TRL5からTRL7まで引き上げる事を目的。参画条件は原則として設立15年以内の先端技術を有するスタートアップ企業。或いはそれを含むコンソーシアム。
<TRLについて>

SBIRフェーズ3は複数の省庁で進められていますが、ここでは宇宙開発分野かつ一定の規模の事業について纏めています。なおメモの部分は、管理人が素人知識で備忘録的に記してあるだけなので、ご注意ください。

令和4年度補正予算の文部科学省分

テーマ①
事業名:民間ロケットの開発・実証事業
採択事業者:インターステラテクノロジズ社  SPACE WALKER社 将来宇宙輸送システム社 スペースワン社  補助金総額:350億円
メモ:
民間ロケット開発支援を目的とした事業。採択された4社はそれぞれロケット、もしくはスペースプレーンを開発する。この事業はSBIRフェーズ3の中で、さらに3つのフェーズに分かれる。その後、複数回のステージゲート審査を経て2社まで絞り込む。

まずフェーズ1には上記4社が採択されスペースワンに3.2億円、インターステラテクノロジズ・SPACE WALKER・将来宇宙輸送システムの3社にそれぞれ20億円が交付された。2024年9月、第1回ステージゲート審査が実施されSPACE WALKERが脱落。残ったインターステラテクノロジズに46.3億円、将来宇宙輸送システムに50億円、スペースワンに12.3億円の交付が決定した。

第2回のステージゲート審査は2026年1~3月頃に実施され、上記の企業の中から2社まで絞り込まれる予定。第3~4回ステージゲート審査も実施されるが、補助金交付対象者の絞り込みは行われない。

この事業における最大交付額はフェーズ1~3の合計で各社最大140億円。インターステラテクノロジズと将来宇宙輸送システムが最後まで残ったとしても、残り交付額はそれぞれ約70億円。予算残額は約178億円。なおこの事業には10社が応募しており、他6社は不明。

・ZEROロケット(インターステラ・テクノロジーズ)
・風神・雷神・長友(スペースウォーカー)
・カイロスロケット(スペースワン)
・ASCA-1(将来宇宙輸送システム)(ページ未制作)
テーマ②-A
事業名:大型の衛星を対象デブリとした近傍での撮像・診断ミッション
採択事業者:アストロスケール社 補助金:上限120億円
メモ:
ADRAS-Jと同様にADR(スペースデブリ除去)衛星のPRO(ランデブー・近傍接近)技術実証・撮像点検・診断を目的としているが、こちらは低軌道の大型衛星デブリ2機を対象としている。対象2機に対し電気推進で効率よく接近し、より自動化した運用が可能な機体を開発する。2027年頃に打ち上げ・軌道上実証を予定しているが、デブリ除去は実施しない。
テーマ②-B-1:人工衛星の軌道離脱及び衝突回避のための超小型水イオンスラスタおよび水ホールスラスタの開発・実証
採択事業者:Pale Blue社 補助金:上限40億円
メモ:
水を推進剤に使う、クリーンな水エンジンを開発する。10~100kg程度の衛星を対象とした超小型水イオンスラスタ、100~500kg程度の衛星を対象にした水ホールスラスタの開発を実施する。人工衛星の軌道離脱や衝突回避の為の技術開発ではあるが、より広範囲な活用が期待される。2026年頃に打ち上げ・軌道上実証を行う。搭載衛星は不明。
テーマ②-B-2:衛星等のデブリ化を防止する軌道離脱促進装置の開発・実証
採択事業者:BULL社 補助金:上限40億円
メモ:
推進剤を使わずに、宇宙機を軌道上から除去するデブリ化防止(PMD)装置を開発する。インフレータブル構造を有するテザー状の構造体を、事前に対象宇宙機に搭載しておく方式。2026年頃に軌道上実証。搭載ロケット不明。

令和4年度第2次補正予算のSBIR3:経済産業省分

テーマA
事業名:月面ランダー製造技術の開発・実証事業
採択事業者:ispace社 補助金:上限120億円
メモ:
高精度着陸(誤差100m以下)と100kg以上のペイロードを搭載可能とする月面着陸機の開発と、それによる月面輸送サービス実証を目的とする。ispaceのレジリエンス・APEX1.0月面着陸機は米ドレイパー研究所が着陸誘導制御システムを開発しているが、この補助金による製作されるseries3月面着陸機は、国産化率が向上すると期待される。H3ロケットでの打ち上げが予想され、2027年頃に実証機を打ち上げ予定。この月面着陸機を使用して、2030年代に年1回以上の月面輸送を目指す。
テーマB-①-1
事業名:小型SAR衛星コンステレーションによる日次InSARサービス技術開発
採択事業者:シンスペクティブ社 補助金:上限41億円
メモ:
InSAR(干渉SAR)とは特定の地点で異なる日時のレーダーデータを比較し、地表面等の変化を検出する事。高精度軌道・姿勢制御システムを搭載した小型SAR衛星2機とInSAR解析システムを開発する。2026年頃、打ち上げ・軌道上実証を予定。
テーマB-①-2
事業名:中高空間分解能と高波長分解能を統合したカメラシステムを搭載する人工衛星及びその利用を通じた新たな宇宙産業創出に向けたビジネス実証
採択事業者:アークエッジ・スペース 補助金:上限35億円
メモ:
Kプロで進められた「高感度小型多波長赤外線センサ技術」の開発成果が活用された、量産可能なハイパースペクトルカメラを搭載した人工衛星を開発する。2028年頃打ち上げ・軌道上実証を予定。将来的には衛星コンステレーション構築を目指す。
テーマB-①-3
事業名:高分解能・高画質且つ広域観測を実現する小型SAR衛星システムの実証
採択事業者:QPS研究所 補助金:上限41億円
メモ:
オフセットパラボラアンテナとDBF(デジタル・ビーム・フォーム)を採用した次世代SAR衛星の開発。これらの機器はエンジニアリング・モデルまではJAXAが開発・製作、フライトモデルはQPS側が製作する。高分解能を維持しつつ、観測範囲の拡大を目指す。光通信端末も搭載し、衛星サイズは200kg以上に大型化。2027年頃に打ち上げ・軌道上実証を行う。
テーマB-②
事業名:衛星リモートセンシングビジネス高度化実証
採択事業者:New Space Intelligence 補助金:上限15億円
メモ:
複数の衛星データを統合・解析等、「テルース」のアプリ開発基盤を強化する。テルースは衛星データプラットフォームの事。さくらインターネットが受託開発した。
テーマB-③
事業名:衛星データ利用ソリューションの集中的開発・実証
採択事業者:sustainacraft社 天地人社 LocationMind社 サグリ社 補助金総額:15億円
メモ:
1社あたりの補助金規模が少ないので割愛。
UPDATE:2024年10月15日

主な参考ページ