ロケットの基礎知識講座Launch-Vehicle
第3回 ロケットの打上げ能力

ロケット基礎知識講座、第3回はロケットを評価する上で大事な3つのポイントの2つ目、「打上げ能力」について解説していきます。

よろしく、ポイント3つは確か「コスト」「打上げ能力」「成功率」だったよね?

はい、その通りです。では打上げ能力とは何なのか?それは目的の衛星軌道に人やモノ、つまりペイロード(荷物)をどれだけ運べるかを表す指標です。

人?日本のロケットはモノだけではなく人も運べるの?

いえ、残念ながら2026年3月現在、日本は人を運べるいわゆる独自の有人宇宙輸送システムを運用するに至っていません。H3ロケットなど運用中の日本のロケットは全て無人ミッション向けロケットです。

そうか〜、残念だけど仕方ない。将来に期待することにしよう。

はい、ではまず打上げ能力を理解する上で重要な「軌道」について説明させてください。これは軌道によって、ペイロードを投入できる質量が異なるからです。軌道とは、人工衛星などが地球の周りを回るコースです。
まず高度によって低軌道・中軌道・静止軌道に分類されます。但し中軌道は使用される頻度が低いので、今回は説明に含めません。低軌道とは高度200~2,000km付近を回る軌道のことですが、低軌道はさらに軌道傾斜角によって分類されるのですが、中でもよく使用されるのが「傾斜軌道」と「極軌道」です。

軌道傾斜角?それは何かな?

軌道傾斜角は、その軌道が赤道に対してどれくらいの角度で傾いているかを表す指標です。軌道傾斜角が90度くらい、つまり北極と南極付近上空を巡る軌道を極軌道と言い、赤道に対して斜めに傾いている軌道を傾斜軌道と呼びます。
極軌道の中でも太陽との位置関係がほぼ一定になる様に設計された軌道を「太陽同期軌道」と呼びます。低軌道への打上げ能力は、傾斜軌道と太陽同期軌道へのペイロード輸送能力で表現されることか多いです。

うーん、ちょっと難しいね・・・

はい、ただ今回はそういう軌道が使用されることが多いのだと、押さえていただければ大丈夫です。次に静止軌道ですが、これは赤道上空高度35,786km付近を回る軌道です。
但しロケットで静止軌道へ直接ペイロードを投入することは稀で、実際には静止軌道へ移行する1つ前の静止トランスファ軌道と呼ばれる軌道にペイロードを投入することが大半です。
これは近地点高度数百km~遠地点高度36,000kmを回る楕円軌道で、この軌道に投入された人工衛星は、自機の推進力で高度35,786km付近の円軌道へ自力で遷移します。

つまり打上げ能力を評価する上で重要なのは傾斜軌道(低軌道)・太陽同期軌道(低軌道)・静止トランスファ軌道、それぞれの軌道に対するペイロード投入能力が重要なのだね?

はい、その通りです。ではこの図をご覧ください。これは架空のロケットの打上げ能力を簡略化したグラフです。
打ち上げ能力は単純に数字で記載されることも多いですが、このグラフのように表現される事もあります。LEOは低軌道の意で42度は軌道傾斜角です。

えーと、このグラフの見方は軌道傾斜角42度の高度400kmの低軌道には250kg強のペイロードが運べるし、500kmの太陽同期軌道には150kg弱のペイロードを運べるよ、と説明しているのかな?

はい、その見方でOKです。軌道と高度によって投入できるペイロード質量が異なります。この図の様に、より高い高度へペイロードを運ぼうとすると、より少ない質量しか輸送できなくなります。

大体、わかってきたよ。ちなみに日本のH3ロケットはどれくらいのペイロードを宇宙に運べるんだい?

H3ロケットには様々な形態があります。一番小さいH3-30Sという形態では、4トンものペイロードを太陽同期軌道へ運ぶ事ができます。さらに一番大きな形態であるH3-24Lという形態であれば、6.5トンのペイロードを静止トランスファ軌道へ投入することが出来ます。

それは凄いね!

今回は少し難しい話になってしまいましたね。次回はロケット評価のポイント3つ目「成功率」のお話です。
