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光学衛星Optical satellite

光学衛星とは?

光学衛星とは、宇宙から地上を撮影する地球観測衛星の一種です。地上を観測する衛星は、大きく2つに分類されます。1つは電波を使って観測するSAR(サー)衛星、もう1つが可視光で観測する光学衛星です。このページでは後者の光学衛星について説明していきます。(SAR衛星についてはこちら)

光学衛星というのは、簡単に言ってしまえば宇宙空間に打ち上げたデジタルカメラです。SAR衛星は電磁波を使いを地上を撮影するので、雲があっても透過し地上を観測できるのですが、解像度が低いという欠点があります。一方、光学衛星は雲を透過できない、夜間も撮影対象を判別しにくいという欠点があるものの、解像度が高くとても分かりやすい画像を撮影できる事が強みです。

従来、光学衛星の開発・運用は多額の費用が掛かる為、政府主体で大型の光学衛星が単機で運用されていました。例えば、過去にJAXAが運用していた地球観測衛星だいち1号は重量4トンという大きさでしたが、現在は100kg程度の小型かつ多数の衛星の協調動作による「衛星コンステレーション」が構築される事が一般的です。これには低コストかつ、観測頻度の向上といった利点があります。

光学衛星の開発・運用主体は政府から民間へ移りつつあり、日本国内にもアクセススペースやキヤノン電子といった企業が開発・運用に参入しています。

AXELSAPCE

AXELSPACE(アクセルスペース)社は日本の民間宇宙ベンチャー企業です。アクセルスペースは2019年から、光学衛星GRUS(グルース)による衛星コンステレーションを構築し、地球観測プラットフォームAxelGlobe(アクセルグローブ)によるサービス展開しています。

2024年06月現在、分解能2.5mのGRUS1シリーズ衛星5機を低軌道上に展開しており、今後はさらに高解像度の次世代機が打ち上げられると推測されます。但し、2024年3月に打ち上げられた小型衛星PYXIS(ピクシス)に、次世代GRUS向けセンサーを搭載し先行実証を計画していたのですが、不具合により正常機能しておらず、実証は困難な模様です。

キヤノン電子

キヤノン電子はキヤノングループのカメラ製品等の開発生産を担う東証プライム上場企業で、近年は光学衛星開発・運用などの宇宙事業も展開しています。これまでに、超小型光学衛星CEーSAT-I・CEーSAT-IIB・CEーSAT-IEの3機の光学衛星を打ち上げており、その撮影データの販売も開始されています。

2024年に打ち上げられた最新のCEーSAT-IE(シーイー・サット・ワンイー)は、わずか重量70kgの機体に口径400mm望遠鏡とキヤノン製ミラーレスカメラEOS R5を搭載しており、分解能0.8mという高解像度で地上を撮影する事が出来ます。キヤノン電子は小型ロケットを開発・運用するスペースワンの筆頭株主でもあり、同社が開発が進めているカイロスロケットで打ち上げられる事が期待されます。

宇宙戦略基金

2024年度より宇宙関連市場の拡大を目指して、日本政府によって宇宙開発基金が設置されました。中でも、文部科学省により設定された「高分解能・高頻度な光学衛星観測システム」事業は、これまで政府が担当してきた防災・減災対策や、ビジネス活用の促進を民間企業主体で進める目的で設定されました。

この事業は5年:最大280億円という巨額の補助金を活用して、民間企業による国際競争力のある光学衛星コンステレーションの構築を加速させ、国内のみならずグローバルでの展開が可能な企業の育成を目指しています。光学衛星は分解能40cmを目指して開発・実証が進められる予定で、補助金の規模から考えて多数の小型光学衛星が打ち上げられるものと考えられます。

これまで民間宇宙ベンチャーに対して政府の様々な支援はありましたが、ここまで巨額なものは初めてとなります。採択時期は不明ですが、光学衛星事業を進めるアクセルスペースやキヤノン電子にとって、非常に重要な事業である事は間違いないと思われます。

UPDATE:2024年6月17日

主な参考ページ

宇宙探査機

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宇宙船

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