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月周回有人拠点 Gatewayゲートウェイ

月周回有人拠点とは

月周回有人拠点(通称:ゲートウェイ)は、月周回軌道上に建造される宇宙ステーションです。月の科学調査・月面開発、火星探査の拠点として活用されます。ゲートウェイはアメリカが主導し、ヨーロッパ諸国(ESA)・カナダ・日本・UAEの協力によって建造され、少なくとも15年間は運用される予定となっています。

ゲートウェイの総重量は約63トン、ISSと比較すると大分小さく、1/7程度の小規模な施設です。有人運用が想定されていますが、年間を通して有人滞在期間は少なく、大半の期間は無人で遠隔運用されます。ゲートウェイは、主に5つのモジュールで構成されています。

HALO:居住・物流モジュール。ゲートウェイの中核棟。アメリカが開発。
I-HAB:国際居住モジュール。ESAが主導して開発。JAXAも主要コンポーネントを提供。
PPE:電力・推進エレメント。電力・通信・推進・軌道維持を担う。アメリカが開発。
ルナ・ビュー:保管庫・窓・燃料タンクを備えるモジュール。ESAが開発。
クルー&サイエンス・エアロック:宇宙飛行士が外に出るためのモジュール。UAEが開発。

他にも、カナダが開発するロボットアーム「カナダアーム3」がHALOに取り付けられます。HALO・IーHAB・ルナビューは宇宙船用ドッキングポートを備えており、地球からの有人宇宙船や物資補給船、そして月面着陸機がドッキングできます。

ゲートウェイの建造には、アメリカのファルコン・ヘビーロケットやSLSロケットが利用されます。まずPPE(電力推進エレメント)とHALO(居住棟)が2025年頃、ファルコン・ヘビーで打ち上げられる予定です。但し、当初は無人で運用し、最初の宇宙飛行士が搭乗するのは2028~2029年頃を予定しています。

月長楕円極軌道

ゲートウェイは月長楕円極軌道(NRHO軌道)という独特な月周回軌道を回ります。これは月の北極上空1500km付近と、月の南極上空70,000km付近をむすぶ長い楕円軌道で、1週間で月を1周する軌道です。

月低軌道(100km)と比較すると、地球と常時通信可能である事、月面開発で最重視される南極の上空を飛行している時間が長い事、地球から比較的低エネルギーで移動できる事、軌道維持に必要なエネルギーが少ない事等々、様々なメリットがあります。

アルテミス計画

このゲートウェイは、アメリカ主導の月・火星探査開発を目的とした「アルテミス計画」の一構成要素です。この計画でアメリカは、約半世紀ぶりの有人月面着陸を目指しています。2024年04月現在、アメリカを中心に、カナダ・ヨーロッパ諸国・日本など37か国が参加しています。

アルテミス・ミッション4では、I-HABモジュールのゲートウェイへのと移送、そして宇宙飛行士が初めてゲートウェイへ乗り込みます。その後、事前にゲートウェイにドッキングさせておいた月着陸船に乗り込み、月面着陸に挑みます。

日本の役割

日本は新型宇宙ステーション補給機HTV-Xの発展型である「HTV-XG」によるゲートウェイへの物資補給や、主要モジュールであるIーHAB居住棟への環境制御・生命維持システム(ECLSS)・バッテリー等を開発・提供します。国際宇宙ステーションISSへの日本の貢献と比較すると、物資補給の需要が年1回程度と少ない事、きぼう実験棟など日本が開発するモジュールは無い事から、ゲートウェイへの貢献度は限定的なものとなっています。

但し、ゲートウェイには日本人宇宙飛行士の搭乗も予定されており、アルテミス計画では月面で走行する大型与圧ローバー(車)を提供するなど、かなりの存在感を発揮します。アルテミス計画への参加を通して、日本は様々な月に関する科学探査や月面開発を進めていくことが期待されています。

UPDATE:2024年4月21日

参考ページ

宇宙探査機

人工衛星

宇宙船

宇宙ステーション