地球観測衛星 その4[情報収集衛星]IGS
情報収集衛星とは
情報収集衛星(略称:IGS)は、日本政府が運用している地上観測衛星群です。防衛・災害対応を目的とした衛星とされていますが、事実上の軍事偵察衛星です。分解能などの性能は安全保障上の機密とされていて、詳細は公表されていません。管轄は防衛省ではなく、内閣府の内閣情報調査室(通称:内調)という情報機関です。IGSの製作は、三菱電機とNECが主導していると推定されています。
導入の発端は北朝鮮による核実験・弾道ミサイル発射実験です。日本政府はこれを偵察する為に、IGSの開発を決定しました。光学衛星4機、レーダー(SAR)衛星4機、データ中継衛星2機の合計10機体制の確立・運用が計画されています。衛星設計寿命は5年~10年程度と推測され、その度に新しく性能が向上した衛星を打ち上げていますが、設計寿命を越えて稼働している機体がある為、2025年04月時点で光学衛星4機・レーダー衛星6機・データ中継衛星1機の計11機の衛星が配備されており、地球上のどの地点でも1日に最低2回観測する態勢を整えています。
名目上は多用途目的なので災害時の運用も想定されていますが、実質的な目的が軍事用途といった事もあり、情報開示が非常に制限されています。災害時にも使用されているのですが、機密保持の観点から解像度を落とした画像が提供されることもあり、運用方法の改善が期待されます。
情報収集衛星の種類
IGSは地球観測衛星(光学衛星とSAR衛星)とデータ中継衛星で構成されています。光学衛星は分解能30cm~1m程度、SAR衛星は分解能50cm~1m程度と推測されています。
それら地球観測衛星が撮影した画像を、地上へ高速転送する為のデータ中継衛星も存在します。従来は地球観測衛星が地上局上空を飛行している時のみ、観測データをダウンリンクすることが出来ましたが、この静止軌道上に展開された中継衛星を利用することにより、ダウンリンク可能時間が飛躍的に向上します。この中継衛星は従来の電波通信システムの他に、よりセキュアな光通信システムを搭載しています。
データ中継衛星1号機は2020年に打ち上げられ、静止軌道上に展開しています。構想上2機の中継衛星の配備が計画されていますが、現時点で2号機の打ち上げは未定です。なおこの中継衛星は、情報収集衛星以外のデータ中継にも活用されています。
短期打上型小型衛星システム
短期打上型小型衛星は、有事等にIGSがミッションを実行できない場合に備えて、迅速に対応できる小型光学衛星として開発されました。この衛星は製造・試験合わせて3ヶ月で完了する事、100kg以下・分解能1m以下を目標に開発が進められました。
2024年03月、カイロスロケット初号機で打ち上げられましたが打ち上げに失敗。衛星は失われました。現在のところ、後継機開発の予定は不明となっています。