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軌道上サービス機-その2[SDA衛星]Space Domain Awareness

SDA衛星とは何か?

SDA衛星とは、軌道上を航行する宇宙機の能力や活動状況などを把握できる軌道上サービス機です。これを理解する為に、まずSSAとSDAについて解説していきます。

SSA(Space Situational Awareness:宇宙状況把握)とは、軌道上に存在する人工衛星や放棄されたロケットの位置や軌道を把握する活動を指します。これらは主に地球上に設置された大型レーダーによって実施されます。ただし、極めて遠距離からの観測のため、対象の位置や速度などは計測できても、それらがどの様な衛星か、宇宙活動の脅威となる宇宙機かを判断する事が出来ません。

そのためにSDA(Space Domain Awareness:宇宙領域把握)という活動が必要になります。SDAはSSAに加えて、対象宇宙機の能力や利用状況などを把握する活動です。その目的の為に、対象宇宙機をより近くから観察するが可能なSDA衛星が必要になります。

SDA衛星は、対象宇宙機に接近し近距離から観察する事で、その能力や利用状況を調査します。最も期待されるのは、軌道上で活動内容が不明な衛星の偵察です。昨今、世界規模での安全保障環境の悪化に伴い、地球軌道上での軍事活動が活発化しています。宇宙空間を安全に利用するために、SDA衛星には大きな役割が期待されています。次項からは、日本で開発されているSDA衛星を紹介していきます。

(注:なおアストロスケールはSDA衛星をISSA衛星と呼称しています。本サイトでは説明を簡潔にするために、SDAとISSAを同義として扱いますが、厳密には異なる用語です。)

ISSA-J1(イッサ・ジェイ)

ISSA-J1は、アストロスケールが開発中のSDA技術実証衛星です。別々の軌道に存在する2つの大型衛星に対して、RPO技術の実証・撮像点検・診断を実施します。同機は接近時にフレキシブルに対応可能な化学推進系と、燃費が良く長距離移動に適した電気推進系を備え、高度な自律運用が可能な宇宙機となる予定です。

本計画は文部科学省のSBIRフェーズ3に採択され、最大120億円の補助金交付が決定しており、日本拠点主体での開発・製造されるものと思われます。現時点では2027年頃の打ち上げ予定されています。

なお、このISSA-J1に使用される衛星プラットフォーム(衛星基本機能モジュール)は、アストロスケールが今後開発される軌道上サービス機にも活用される見込みで、同機の開発事業は極めて重要です。

軌道対応宇宙システム実証機

機動対応宇宙システム実証機は、アストロスケールが開発中の防衛省向けのSDA技術実証衛星です。静止軌道上に展開される小型SDA衛星で、静止軌道上を航行する人工衛星の情報収集活動を行います。また高機動性や衛星間光通信機能を有しており、光データ中継衛星との間で静止軌道間での光通信技術実証も計画されています。

アストロスケールは同機の試作を防衛省より約66億円で受注しており、日本が静止軌道上の静止衛星を防護する能力を保有する事が期待されます。現時点で打ち上げ時期は不明です。

多軌道観測衛星

多軌道観測衛星は、キヤノン電子が開発する防衛省向けのSDA衛星です。キヤノン電子はこれまでに複数の地球観測衛星の開発・運用実績があるため、それらの技術を応用したSDA衛星になると考えられます。低軌道で運用されるものの、低軌道から静止軌道まで広大な領域を観測対象としています。

防衛省SDA衛星(仮称)

防衛省SDA衛星は、その名の通り防衛省が運用予定のSDA衛星です。同機は中~大型のSDA衛星である事以外、公開されている情報は極めて少ないです。初号機はH3ロケットで2026年頃に打ち上げられる予定で、将来的には複数機の運用も検討されています。

UPDATE:2025年6月19日

主な参考ページ

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