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軌道上サービス機-その1[軌道上サービス機の基本]on-orbit service

軌道上サービス機とは

軌道上サービス機(OOS)とは、宇宙空間の物体に対してサービスを提供する人工衛星の総称です。これまで、人工衛星が提供してきたサービスは通信・測位・地球観測などの情報を、地球上のユーザーに対して提供するものでした。

一方で軌道上サービス機は、他の人工衛星や放棄されたロケットなど宇宙空間を航行している物体に対してサービスを提供します。例えば制御を失い漂流している人工衛星の除去、正体不明の人工衛星の調査、燃料が枯渇した人工衛星への燃料補給などです。

軌道上サービス機の対象となる物体は、秒速数kmという高速で移動しているため、高度なRPO技術などが必要になります。2025年現在、日本国内でこれらの技術開発を進めている企業は、Astroscale(アストロスケール)などわずか数社に限られます。

RPO技術とは

RPO(Rendezvous and Proximity Operations)技術とは、対象の宇宙機に対してランデブー(合流)して、その近傍で様々なサービスを提供することができる技術の総称です。例えば、地球上のセンサー情報をもとに対象に接近する絶対航法技術、自機のセンサーで対象を捉えてより近傍に接近する相対航法技術、自機と対象機の速度・回転を合わせる技術、対象を捕獲する技術、それらをより自律的に動作させる技術などです。

上記のうち、捕獲を除く技術を有する軌道上サービス機であれば、対象を観察することで情報収集(SDA)サービスを実施することが可能です。この機体をベースに様々なモジュールを追加搭載することにより、より広範囲なサービスが提供可能な軌道上サービス機に発展させることができます。

例えば捕獲して燃料補給する機能を付加すれば人工衛星の寿命延長(LEX)サービス、捕獲して加速すれば軌道保持サービス、そして捕獲して減速させればスペースデブリ除去サービスが可能となります。RPO技術は、様々な軌道上サービス機の基盤となる技術です。

Astroscale

Astroscale(アストロスケール)は、東京証券取引所グロース市場の上場している日本の宇宙開発ベンチャー企業です。日本本社の他、英国・米国・フランス・イスラエルに拠点を有しており、特に日本・英国・米国での事業拡大に注力しています。

スペースデブリ除去技術の開発を目指す企業として有名ですが、寿命延長衛星(LEX衛星)、軌道上の故障機や物体の観測・点検衛星(ISSA衛星)の開発も進めています。同社は後述するADRAS-Jによって、世界でも数少ない非協力物体に対するRPO技術を軌道上実証に成功しています。

Orbital Lasers

Orbital Lasers(オービタルレーザーズ)は日本のスカパーJSATが2024年に設立したスタートアップ企業で、レーザー(光線)を使ったスペースデブリ除去事業を計画しています。対象物にレーザーを当てることにより、レーザーアブレーション効果によって対象表面を気化・プラズマ化させ推力を発生させ、対象物の回転を停止・減速させることができる衛星の開発を進めています。

前述したとおり、軌道上サービス機は様々な種類があります。次のページからは実際に開発された、或いは開発中のSDA衛星・スペースデブリ除去衛星・寿命延長衛星を紹介していきます。

UPDATE:2025年6月19日

主な参考ページ

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