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スペースデブリ除去(EOL・ADR)衛星Space debris removal

スペースデブリとは何か?

スペースデブリとは、地球軌道上に存在する「機能停止あるいは制御不能の人工衛星」「打ち上げに使用されたロケット上段部」、或いはそれらの破片の事をいいます。つまり人類が作り出した宇宙空間に漂うゴミです。2022年現在その数は、大きさ数十cm以上は数万個、数mm以上の物は数億個あるとされています。

スペースデブリ除去衛星は、それらスペースデブリを捕獲、或いは減速させ、大気圏に突入させて燃え尽きさせる事が任務です。2024年5月現在、実用化されたスペースデブリ除去衛星は無く、日本のアストロスケール社やオービタルレーザー社等、複数の企業が様々なタイプの除去衛星を開発中です。

なぜスペースデブリを取り除く必要があるのか?

それはそれらが超高速、実に時速10,800~28,000km以上のスピードで地球のまわりを飛ぶ危険物だからです。ネジ1個のデブリでも人工衛星に衝突すれば破壊され、宇宙飛行士に衝突すれば致命的な影響が出ます。しかもスペースデブリは人類の宇宙進出の拡大と共に、急速に増大し続けています。

現時点でデブリが多くあるとはいえ、広い地球軌道上では人類の宇宙進出を妨げてる程ではありません。但しこのまま状況を放置すると、他の衛星・宇宙船・宇宙飛行士に衝突する惨事が続発したり、デブリが多くなりすぎて新規ロケットの打ち上げも、ままならなく成るかもしれません。地球軌道上のデブリを除去する事は、人類が宇宙空間へ進出し続ける為に非常に重要な仕事です。

軌道上の危険な人工物を軌道上から低減・除去するサービスは2種類に分けられます。ややこしいですが、人工衛星がスペースデブリ化する前に対処するのがEOLミッション。スペースデブリ化してしまった物体の除去するのがADRミッションとなります。

EOL(エンド・オブ・ライフ)
人工衛星等がミッション・サービスを終了後、スペースデブリ化する前に地球軌道から除去するサービスです。除去対象にはドッキングプレート等、事前に捕獲用の機器が搭載されていたりします。
ADR(アクティブ・デブリ・リムーバル)
スペースデブリ化したロケットの残骸、制御できていない人工衛星を地球軌道から除去するサービスです。除去対象は自らの位置を発信していない・コントロールされていない、軌道からの除去に対応していない非協力物体です。

Astroscale

Astroscale(アストロスケール)社は、日本の宇宙開発ベンチャー企業です。スペースデブリ除去衛星他、寿命延長衛星(LEX衛星)、軌道上の故障機や物体の観測・点検衛星(ISSA衛星)の開発を進めています。その中でもスペースデブリ除去に重点を置いた企業で、日本本社の他、英国・米国・フランス・イスラエルに展開しています。

以下は、アストロスケール社が開発、或いは開発中のEOL・ADR衛星です。

ELSA-d(エルサ・ディー)
2021年03月に打ち上げられた、模擬衛星とその捕獲機で構成されるEOL(人口衛星サービス終了)技術実証衛星。最初の試験捕獲は成功したものの、自立捕獲のテスト中に推進システムが故障。自立捕獲は出来なかったものの、各種試験を実施し2024年運用終了。
ADRAS-J(アドラス・ジェイ)
2024年02月に打ち上げられたADR(スペースデブリ除去)技術実証衛星。2024年4月頃を目途に、軌道上の大型デブリ(H-2A:15号機第2段ロケット)を対象にしたランデブー・近傍運用テストを実施。デブリ捕獲試験は実施しません。
ELSA-M(エルサ・エム)
2025年頃打ち上げ予定のELSA-dの後継衛星、EOL(人口衛星サービス終了)衛星です。英国拠点で製造・運用され、ドッキングプレートを搭載したワンウェブ社の通信衛星3機を磁石で捕獲、実際に軌道上から除去するテストを実施。成功すれば、世界初のEOL実施となる予定です。
COSMIC(コズミック)
2026年頃に打ち上げられるADR(スペースデブリ除去)衛星。英国の衛星2機を、軌道上から除去する英国宇宙庁のミッションです。ELSA-Mをベースに英国拠点で製作され、ロボットアームで対象デブリを捕獲・除去を目指します。世界初のスペースデブリ除去となる可能性があります。但し英国宇宙庁からミッション最終フェーズの受注は確定しておらず、実施されない可能性があります。
SBIR3プロジェクト(仮称)
2026年頃に打ち上げられるADR技術実証衛星。このミッションには政府からの補助金、最大120億円の交付が決定しています。おそらく日本拠点で製造されるものと考えられ、低軌道の大型衛星デブリ2機に対して、ランデブー・近傍運用テストを実施します。実際にデブリ除去は実施しません。
ADRAS-J2(アドラス・ジェイツー)
2027年頃に打ち上げられる予定のADR衛星。軌道上の大型デブリ(3トンくらいのロケット上段)を、実際に軌道上から除去します。JAXAのCRD2フェーズ2に採択され、補助金最大114億円が支出される見込みです。日本拠点での開発が想定されます。

Orbital Lasers

Orbital Lasers(オービタルレーザーズ)は日本のスカパーJSATの子会社で、レーザー(光線)を使ったスペースデブリ除去事業を計画しています。レーザーをどの様に使うかと言うと、レーザーアブレーションという現象を用います。これは対象物にレーザーを当てる事により、対象表面を気化・プラズマ化させ推力を発生させる事で、対象物の回転を停止・減速させる事ができます。

オービタルレーザーズのスペースデブリ除去事業は2つのサービスがあります。まず1つ目のデタンブリング事業は、低出力レーザー照射によってデブリ回転を止める事ができる装置の外販です。回転しているスペースデブリ捕獲はかなりの難易度があると考えられますが、レーザーアブレーションによってその回転を止める事ができれば、ミッション難易度が低下すると考えられます。

例えば、上記アストロスケール社のADR(スペースデブリ除去)衛星は、対象デブリと同様に自機を回転させて捕獲する設計ですが、この装置を使えば対象デブリを停止させてから捕獲する事が可能になり、ミッションが容易になる可能性があります。なおこの装置は2025年からの販売が計画されていますが、まだ軌道上実証はされていません。

次により期待されるのが、実際にスペースデブリを除去する事業です。オービタルレーザーズ社自身が、レーザーを搭載したADR衛星を運用します。レーザーといっても、一瞬で対象物を破壊・減速させるような出力はなく、100~200kg程度の小型テブリに対し数十ワットクラスのレーザーを数か月~数年かけて照射し、対象物を軌道から除去します。

オービタルレーザーズのADR衛星は2027年後頃、打ち上げ・軌道上実証が計画されており、順調に進めば2029年頃にADRサービス開始を予定しています。

UPDATE:2024年6月14日

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