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寿命延長(LEX)衛星Life Extension

LEXとは?

LEXとはLife Extensionの略称で寿命延長衛星の事です。これは、すでに打ち上げられた人工衛星の寿命を延ばすことが出来る衛星で、主に2つのタイプに分けられます。1つは対象衛星にドッキングして軌道保持・修正を行うタイプのLEX衛星。もう一つは対象衛星にドッキングして燃料補給を行うタイプのLEX衛星です。

例えば、地球赤道上空36,000km付近の静止軌道上ある人工衛星、これを静止衛星と言いますが、この軌道を維持する為には少なからず燃料を消費します。燃料が枯渇するとサービス終了して、新しい静止衛星を軌道に投入する必要がありますが、これには数百億円という多大な費用がかかります。しかし、LEX衛星があればドッキングして軌道を維持し続けたり、燃料を補給する事により静止衛星の寿命を延ばすことが出来ます。

また静止衛星は、基本的に特定地域の上空に留まり続けますが、なんらかの事情により別地域へ移動する必要がある場合があります。例えばアジア上空にある静止衛星をヨーロッパ上空へ移動させるケースなどです。衛星単独では燃料消費の関係からその実行が難しい事がありますが、LEX衛星があれば静止衛星にドッキングして移動させる、あるいは燃料を補給して自力で移動してもらう等の対応が可能です。

他にも静止軌道は大変重要な軌道な為、静止衛星はサービス終了後、墓場軌道という静止軌道からさらに300km程の上空の軌道に上昇させて、他の静止衛星の邪魔にならない様にする必要があるのですが、これに失敗する衛星が多く問題になっています。これに対しても、LEXがドッキングして墓場軌道まで遷移させたり、燃料補給する事でこの問題に対処できます。

この様に様々な問題に対処することが出来るLEX衛星ですが、判明している範囲で日本企業で開発しているのは、Astroscale(アストロスケール)社のみとなっています。アストロスケール社のLEX衛星は、主にアメリカ・イスラエル支社主体で進められている模様ですが、内閣府のプロジェクトを通じて日本拠点でも開発が進められる可能性があります。

アストロスケール社のLEX衛星

APS-R
Astroscale Prototype Servicer for Refuelingの略称で、アメリカ宇宙軍より受注した燃料補給LEX試作衛星です。この衛星はOrbit Fab 社製のRAFTIと呼ばれる燃料補給インターフェースを搭載しており、人工衛星の燃料であるヒドラジンを静止衛星に補給する事ができます。2026年頃、米宇宙軍に引き渡されますが、実際に打ち上げられるかは不明です。
LEXI-P(レクシー・ピー)
静止軌道上に人工衛星に対して、軌道修正ミッションを実施するLEX衛星です。最短で2025年頃打ち上げを計画していますが、まだ静止衛星運用事業社から受注出来ていない為、実施されない可能性があります。またこの衛星は、APS-Rによる燃料補給を受ける可能性があります。
K-Programプロジェクト
低軌道上の人工衛星への燃料補給を実施するLEX実証衛星です。これは内閣府のプロジェクトで、最大120億円が支出されます。但し、アストロスケール社の採択が決定している訳ではなく、別企業により実施される可能性もあります。採択企業は2024年8月以降に発表され、打ち上げは2028年頃の予定となっています。
UPDATE:2024年6月16日

主な参考ページ

宇宙探査機

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